top of page

(Mme.) Kazuko YAMAGUCHI

  • Black Instagram Icon
検索

KOBIDOを習った話

更新日:6 日前

KOBIDOという言葉を聞いたことがありますか?日本語で「古美道」と書きます。私が最初にこの言葉を聞いたのは、もう10数年前になると思います。雑誌だったか、Webサイトだったか、今では思い出せないのですが、日本に古来から伝わるマッサージを使った美顔術で、日本発祥のものであるにもかかわらず、そのテクニックを利用できるのは、皇室の人など一部の高貴な人々だけであることから、日本の一般庶民には知られていない幻の美容法、という内容でした。上皇后美智子さまが若き頃、定期的にこのマッサージを受けられていたそうで、そんな一般大衆には知られていない未知の美顔マッサージがあるのか、と私の頭の片隅に印象に残っていたのでした。


それから時は経ち、私は中医学の勉強を初め、推拿(すいな)というマッサージの術を習得しました。この推拿は、遣隋使・遣唐使の時代に日本にも伝わり、日本ではさらに独自の発展を遂げ、現在の日本での按摩や指圧、整体などの手技技術は、元をたどれば、この推拿に源流があります。

そして、スイスの街の中でも、よく目を凝らせば、看板や、施術メニューに<KOBIDO>と書かれているエステティックサロンがあることに気が付きました。日本では知られていないKOBIDO、どういうわけかパリで火が付き、ブームになって、ヨーロッパに広がったようです。


私は日本人であることから、日本発祥のこの技術をいつか学んでみたい、と思いながらも、中医学の勉強がひと段落するまでは、あれこれと手を出すと「二兎を追う者は一兎をも得ず」という状態になるのでは、という危惧があり、傍観するのみでしたが、去年の暮れに5年間通った中医学の学校の卒業証書をめでたく手にし、一つの区切りがついたので、以前から思いを馳せていた古美道の講習をぜひ受けたい、と強く思うようになりました。


☆どこで古美道が習えるのか

古美道の歴史は古く、今を遡ること約550年前、1472年に誕生したと言われています。この美顔術は、按摩師が開発した48の技法から成り立ち、現在は26代家元である望月正吾氏がその手技を伝承しています。パリで、この家元である望月氏が直々に教えている教室がある(あった?)らしいのですが、現在は、望月氏は活動の拠点を日本に戻しているようです。スイスでもチューリッヒやジュネーブなどの都市部で、望月氏のテクニックを継承した弟子や孫弟子が教えている場所があり、私の住むジュネーブでも、いくつかのエステサロンで教室を開いているところを見つけ、講習が1月初旬にスタートする(一番早い時期に行われる)教室に通う決意をしました。


私が通ったところは、先生はスイス人で、望月氏の孫弟子であり、少人数制で生徒は最大4人までの教室で、プログラムは、前半の3日間の講習の後、約1か月の自習期間を経て、後半2日間は仕上げと実技のテストが行われて終了というものでした。受講者の対象はエステティシャンですが、私はエステの技術は全く持ち合わせていないので、申し込みの前に先生に、自分はエステの施術知識がないが受講可能であるかと、一応問い合わせをしました。返事は、かなりの自主努力が必要であるが、受講に問題はないとのことだったので、申し込むことにしました。


☆始まった古美道教室

そうして1月の初旬、私は古美道教室に通い始めました。私と一緒に受講するのは、他2名で、2人ともエステティシャンです。テキストも使用する言語も当然、フランス語です。エステ用語など私は全く知らなかったので、最初の2日間は見様見真似でついていくのがやっと、という感じでした。

マッサージモデル(被験者)を先生が手配してくれていて、初日から早速、顔にオイルを塗ってマッサージの実技をすることになりました。私は推拿でやったマッサージのように、体を対象としたマッサージと同じ調子で顔のマッサージを始めたところ、被験者に(この女性もエステティシャンとのことでした!)「痛い、痛い!顔をそんなに強くマッサージしちゃダメ!もっと優しく!」と言われ、そうか、体を1時間マッサージするのと顔を1時間マッサージするのでは、対象の面積が全く違うので、同じように力を入れてしまってはダメなのだ、ということを即座に思い知ることとなりました。

もちろん、細かいテクニックやプロトコルがあり、最初の2日で8割ほど、すごいスピードで先生が手法や手順を見せてくれました。この2日間はずっと、本当に私はこのスピードで技術を習得できるのか、授業について行けるのか、たびたび不安を覚えていました。3日目に入ってから、やっと動きにも順序にも用語の使い方にも慣れてきて、自分の中に余裕が出てきたと思います。3日目の午後は、先生の模範演技を通しで録画することができ、これでこの1か月、この場を離れても復習できるとホッとしました。と同時に、何か自分の中で納得できないものというか、違和感のようなものを感じるようになりました。


☆「道」の精神はあるのか

この納得できないもの、違和感とは何なのだろうか、と自答したところ、答えはすぐに見つかりました。それは、「古美道」といいながら「道」の精神がなかったことです。先生はスイス人で、日本発祥の古美道を教える立場でありますが、日本には一度も行ったことがないらしく、日本文化に触れたことのない人だったのでした。「道」のつくお稽古事なら、型や礼儀を尊重し、自分と向き合いながら、静寂の中で集中して行う、というのが、日本人の私たちからすると当然のことなのですが、そういう雰囲気とは程遠く、少数人数なのにずっとおしゃべりしながら(内容は私にとってはどうでもよいこと)手を動かしていることに、私は違和感を覚えてしまったのでした。確かに、先生の動作の、手の動きやテクニックの一つ一つは、非常に洗練されていて、効果もあるのですが、「道」の精神が伴っていなければ、私にとっては、それは単なる美容マッサージだと思ってしまったのでした。


約1か月後に控えた実技のテストまでに数をこなして練習せねばならず、無料で古美道の美顔マッサージを施術する、という触れこみで、多くの人に私の施術部屋に来ていただくことになりました。そこで一人きり(+被施術者)で古美道を行っていると、教室でおしゃべりをしながら行うよりも、はるかに集中して「氣」を送り込むことができるのを実感できました。


「道」という字がつくからには、やはり最低限の文化的な要素は尊重してほしい、そして、この講座に今後日本人が来るかどうかもわからない、今、私が言わなければもう一生機会がないかもしれない、という思いから、迷った挙句、私は先生にメールを書くことにしました-「道」が付く習い事はどれも長い歴史があり、先人たちが磨いてきたテクニックを使わせていただくという気持ちで、自分自身と向き合いながら、静寂の中で稽古をするもの。おしゃべりしながら稽古をするのは私にとっては非常に違和感があった。一度ぜひ日本に行って、ツーリスト用のものでもいいから、「道」の精神を感じることができる体験をしてほしい-という旨のことを書きました。


そのメールに対して先生から返事が来ました。「指摘してくれてありがとう。少しでも自分の講座を良いものとしたいので、とてもありがたい意見です」ということで、後半の講座では、静寂の中で、無駄なおしゃべりは極力無くして、集中できる環境を作ってくださったのでした。


☆古美道の効果とは

さてここまで書いて、古美道には一体どんな効果があるのかと思う読者が多いでしょう。Chat GPTに聞いてみると次のような回答が出てきます。

リフトアップ: 顔の筋肉を刺激し、引き締めることで、リフトアップ効果が期待できます。

アンチエイジング: 血行を促進し、肌のハリやツヤを取り戻すことで、しわやたるみを予防・改善します。

リラクゼーション: 経絡やツボを刺激することで、リラックス効果が得られ、ストレスを軽減します。

リンパの流れ改善: リンパの流れを改善し、老廃物の排出を促進することで、むくみやくすみを改善します。

自然治癒力の向上: 顔の経絡やツボを活性化させることで、自然治癒力を高め、身体全体のバランスを調えます。

私自身、顔のマッサージというと、今までは、毛穴の汚れを出す、とか、保湿効果を高めてすべすべの肌にする、というイメージがありました。単独で練習を始めて、2人、3人と過ぎた頃、私から見ても、被験者の顔が「あれ?気のせいかもしれないけど、始める前よりなんだかスッキリしている」と思えるようになりました。5人目のときでしょうか、終わって、身支度を整えた被験者の顔を見てびっくり、あまりの変わりよう(以前と比べて目元が格段とぱっちりとして、ノーメイクなのにアイラインをいれたような目力の強さ、フェイスラインがすっきりしている)に、「あら!〇〇さん、目が大きくなって、キラキラしてますよ!一体どうなってるの⁉」と驚いて言いました。少女漫画のお目目とでもいうのでしょうか、すごくキラキラした瞳になって、顔が小さく引き締まった感じです。この顔の変化、マジですか⁉マジックですか?とあの時の驚きは忘れられません。本人も鏡を見て、「エッ!」「今までのぼやっとした顔が小顔になって目元がぱっちり、くっきりはっきりしている!「昨日、滞在許可証の写真を撮ったのに、こんなことなら一日ずらせばよかった、悔しい‼」と心から後悔しているようでした。


その後、被験者のビフォーアフターの写真をまじめに撮ることにしました。施術前後がそれほど変わらない人もいますが、ときにはびっくりするように変化する人もいて、約1時間マッサージするだけでここまで顔が変わるとは、古美道とは魔法のマッサージのようです。よくあるケースが、

フェイスラインがすっきりして、小顔になる

目が大きく開いてアイラインを施したように印象的に見える

全体的にたるんだ顔が引き締まってキュッとまとまる

しわが薄くなって若返る

なぜか目の位置が若干下がり、若見えする

鼻の幅が狭くなる

等です。


ある方たち(60代と70代各1名ずつ)は、顔の幅が狭くなって、目がぱっちり、ぷっくりと開き、なんだかとても魅力的になって、施術した私でさえ施術後のお顔を見てドキドキしてしまいました。来た時に何か不満がありそうな雰囲気で話していた40代の女性は、終わった後「自分の顔がこんな風に変わるなんて、すごい!嬉しい!」と言って帰っていきました。そういう方たちはどういうわけか、キラキラとした粉でも身にまとったかのように輝いて帰って行きます。帰宅してから、家族の方たちに「あれ、なんか顔が違うね」とか「顔に何かしたの?」と聞かれた方が何人もいたようです。


☆おしゃべりしてはダメ

古美道の施術をやっていて気が付いたことは、指に力を入れてはならないので軽いタッチで行うけれど、大変な集中力を要する作業であるということです。顔周辺のマッサージをじっくりと1時間ほどかけて行い、終わった後はものすごい「氣」の消耗のしようです。施術中に被験者に話しかけられて相手をして返事をしていると、それこそ「気が散る」というのはこのことかと思いますが、「氣」が入らずに効果があまり出ないような気がします。(多くの人達はマッサージ中に眠ってしまうので、話しかけられるのは非常に稀なのですが…)これは、書道で気持ちを集中させて筆を運んでいるときに、途中で話しかけられるとうまく字が書けないのに似ていると思います。また、一人の施術が終わって、ホッと一息つくはずの時に、次の予約の人が時間よりも15分以上早くやってきたことが何度かありましたが、施術と施術の間に一呼吸も入れる暇がないと、気力を回復する時間がなく、本当に辛かったです。次の人のための施術をすぐに始めなくても、その場にいる人の相手をしているだけで、十分な「氣」の回復ができないのを感じました。

実技の練習期間中、結局50名以上が私のところに来て、大多数の方は喜んで帰っていただけたのですが、ときに失敗もありました-前述のように、話しかけられて集中できなかった件の他、なぜかほうれい線の一部が深くなった例が1件、途中で私の指先が目の縁に当たってしまい後日下まぶたが腫れたケースが1件、そしてどうしても私の「氣」が入っていかない、被験者の方が、明らかに外からのエネルギーに対して、自分から防御のバリアを張って受け付けないようにしているケースが1件ありました。この方は過去に、心に何かトラウマを負うような出来事があったのでしょうか。顔のマッサージをしているだけですが、何も話さなくても、おや、と思ってしまうケースがあるので、不思議です。


☆人を幸せにする技術 魔法の手を持っているのかもしれない

練習として40名ほどやった時点で、施術後のある女性が帰り際に「1時間ちょっとでこんなに幸せな気分になって帰れるなんて!これは人を幸せにする、とても良い仕事ですね」と言って去っていきました。私はその言葉にはっとしました。古美道を取得するまで、中医学の学校で得た資格とは別の、比較的最近にできた鍼灸の「国家試験」を受験するかどうか迷っていましたが、この国家試験を受けるには、更にまた恐ろしく長い時間の座学での準備と、万フラン単位の費用と、数年間に渡っての試練に耐える根性と気力が必要となります。


直近まで私はこの国家資格の受験に対応できるように準備をしていましたが、同時に自分の中で大きな迷いが常にありました。自分がもしあと10歳若ければ間違いなく挑む価値はあるのでしょうが、これから時間と費用と気力をかけて準備して、果たしてリターンはそれに見合うのか(費用を取り返す十分な時間はあるのか)。すでに今持っている知識でもかなりのものであるが、さらなる苦労をして得る知識は補足的なもので、そのために色々なことを犠牲にしなければならず、それは一体、その犠牲に見合うものなのか。カントンによっては、今後は国家資格を持つ者だけが鍼灸の施術を行うことができるが、幸い私の住むジュネーブ州では、非常に緩く、そこまで規則が厳しくないことなどを考えました。


もし私が鍼灸の国家試験の準備のために自分の時間やエネルギーを費やすならば、それは古美道を施術する時間が減るということで、結果的に非常に残念なことになってしまいます。古美道の先生からは「古美道は、毎日1時間、1年間練習を続けたら技術を取得できる」と言われていましたが、私の場合は、数日間習った後、ほんの数時間の経験で驚くべき効果を発揮し始めたように感じました。皆が私の手のことを「暖かくて気持ちいい」とか「ものすごい氣が来るのを感じる」などと言ってくれ、私は、もしかしたら魔法の手を持っているのかもしれない、と思い始めました。そして、この技術を使えない環境に自らを追い込んでしまうのは、とても残念なことと思い、結論として、鍼灸の国家試験は受けないことに決めました。


☆そして迎えた実技試験、中医学が大きな木とすれば、古美道は枝

そうして、最初の講習から1か月が経ち、2月に講義の後半の日を迎えました。1日目に仕上げの講習があり、細かいテクニックの修正や先生からのコメントを受け、2日目に実技のテストです。1日目の時点で私の施術を見た先生は「カズコ、私は明日、もうテストであなたの実技を見る必要はないわね」などと冗談ながらに言っていたのでした。実技試験では普段通りに、大して緊張することもなく済ませることができ、無事に合格して終了証を頂くことができました。古美道の試験は、中医学の実技の試験に比べたら、緊張の具合も難易度も比べ物にならないほど軽かったと思います。中医学が大きな木とすれば、古美道は枝で、太い幹があればこそ、枝には大きな花が咲くのでしょう。


古美道を施術していて、私は中医を学んだ経験から、否が応でも経絡(エネルギーの通り道)やツボ、陰陽のバランスのことを意識してしまいますが、私が通った教室では、この経絡のことや、ツボには授業中一切触れなかったので、他の施術者は、これらのことを知らずに一体どのように古美道のマッサージを行っているのか不思議です。こちらで古美道を受ける非日本人は、動きだけは同じように見えて「道」の精神が伴わない古美道のマッサージをやってもらって、これがKOBIDOというものか、と思ってしまうかもしれませんが、それは、SUSHIと言われて本物の寿司を食べたことがない人が、寿司のように見える食べ物を食べて、「SUSHIってこういう食べ物なんだ」と思うのに似ているのかもしれません。私のところにいらした50数名のうち、こちらのサロンで過去にKOBIDOのマッサージを受けたことがあるという数名の日本人の方がいらっしゃいましたが、高いばかりで大変がっかりした、というのが共通の感想でした。日本人には、古美道の経験が初めてでも、それが「道」と言えるべきものかどうか、わかるのだと思います。この辺りは、民族が持つ遺伝子の記憶とでもいうべきものなのでしょうか…?


非日本人でも、素晴らしい古美道の施術者はいるでしょう。また、古美道の名前を謳わなくても、古美道同様の効果があるマッサージを行う施術者もいることでしょう。それが本物の古美道かどうか、その古美道で満足できるかどうかというのは、受ける人が決めることと思います。私だってもしかして、家元の望月氏から直接指導を受ければ、「あなたのマッサージは古美道ではない」と言われる可能性もあるわけです。しかし1時間ほどのマッサージで顔の印象が劇的に変わったり、精神的にリラックスして神秘的な森の中に深く入り込んだような錯覚に陥ったり、施術後に大きな幸福感を感じて帰ってもらう人が続出したという事実は、私にとって大きな自信になりました。技術の習得にはそれなりに費用がかかりましたが、新しい技術を得ることができて本当に誇らしく思うし、私の施術で一人でも幸せな気分になってくれれば私も幸せな気分になります。施術は無料で行っているわけではないので、誰にでも簡単に来て、と言えるわけではないのですが、少し幸せな気分になりたいときには、私がそのお手伝いをできれば、私もとても嬉しく思えるのです。

 
 
 

最新記事

すべて表示
私の初めて【中国旅行記】

2024年10月17日から11月4日まで予定通り、中国-北京・桂林-に行ってまいりました。少しその体験記を書こうと思います。 今回の渡航は、私が通っていた中医学の学校Institut Huaxia  Formation médecine traditionnelle Chinoise Suisse Romande Institut Huaxia (Vaud州)のカリキュラムの一環で、最終学年の仕上

 
 
 

コメント


© 2026 Kazuko Yamaguchi. All rights reserved. 無断転載を禁じます

bottom of page